枇杷の実
今年も、玄関先の枇杷の実は、 たわわに実り枝を枝垂れさせる。 望みの人は、既に居ないままに。 梅雨のある日の憂鬱。
悲しみも喜びも、既に其処には無く。 あるのは、待ち人の居ない、居間の片隅。 寂寥の日々は、無常に流れ、 振り返る事さえも与えさせずに。
幾遍、幾万遍、その名を呼びざらんや。 過ぎては帰らぬ、梅雨の過日よ。 どの様な形であれ、傍らに。 供にある事が、唯一の。