慟哭
赤銅色に焼けたこめかみに、残るは古い弾傷。
内太腿の白い皮膚にある貫通銃創。
人生を跨ぐ程の時を経ても残る、死の後先。
幼き私が聞いたのは、
生々しく、禍々しく、かなしい、
血で肉を洗うが如きの、赤い、赤い、うた。
両手全ての皮と爪を失いながらも、
戦友の骸に触れたるは、
私を撫でた手と同じ。
獣の様に鋭く深い眼差しも、
私を見る時は緩く潤んだ。
幸せは風の如く束の間の出来事。
終ぞ、その口から憎しみは無く。
赦しを請うが如くに、憂い有り。
地の底より震撼せし、慟哭よ。
忘却出来る筈も無く。
既に血肉で有り、
私を破壊し、創り上げる。
煉獄のうた。